研究概要

センター長研究室では、大学保健管理に関わる衛生学研究の他、医療用情報技術についての基礎研究、公衆衛生の情報化についての応用研究に加えて、医療の情報化についての政策研究に取り組んでいます。今まで全国の共同研究者、研究協力者とインターネットを利用した遠隔形式で進めてきましたが、北見工大にて近未来保健情報技術特区開拓ユニット(PURSUIT-H)が設置されたことで、組織的な研究体制に移行しつつあります。他大学部生や大学院生の研究協力、大学院進学を歓迎します。お気軽にご連絡下さい。

大学保健管理研究

健康診断にて行われる尿検査は、試験紙を用いた簡易法(定性法)にて異常の有無を確認し、異常があれば詳細検査(定量法)へと進む形で運用されています。現在、この定性法の精度管理と異常値が生じる原因検索に取り組んでいます。
また、全国の医療機関において利用されているインフルエンザ等の検査キットについて、検査キット数を上回る患者が受診したときにどのようにキットを利用するべきか、効率的な活用に向けた数理モデルの研究に取り組んでいます。

基礎研究 / 医療用情報技術

診断支援システム

2009年より、未分類の難病研究支援という目的で、診断支援システムの研究開発に取り組んでいます。いわゆる医療用人工知能研究です。診断エンジンの性能は、最終的にデータ量さえ確保できれば向上するため、現在は医療用人工知能のユーザーインターフェース研究に注力しています。その一環で、「医師の疾患知識量推計」、「疾患類似度計算」、「疾患関係の二次元表現」等の研究成果があります。

医療用自然言語処理研究

医療用情報技術の技術革新の停滞の背景には、カルテに書かれるさまざまな記録をコンピュータが自動処理できない問題がありました。この医療用自然言語処理(言葉のAI)研究の発展に向けた取り組みを続けてきました。
現在は、理化学研究所革新知能統合研究センター(AIP)松本チームと協力し、入院カルテの自動要約研究に取り組んでいます。

ネットワークI/O仮想化

大学院時代より、コンピュータにおけるネットワークI/Oの仮想化について研究してきました。専門的には、I/Oスケジューリングと言われる分野の研究で、簡単に言えば、時々遅くなるコンピュータをいかに快適に使えるようにするか、についての研究です。この技術を医療に応用することで、医療従事者の負担を下げる、より良い医療用情報システムを実現したいと考えています。

応用研究 / 公衆衛生の情報化

保健医療行政の効率化

前職である国立保健医療科学院時代より、危機的事態が生じた際に保健医療分野における行政効率を維持するための研究に関わっています。今まで、新型インフルエンザ対策や東日本大震災支援等に関わり、 産学連携型の被災地支援プラットフォームやShinsai FaxOCRプロジェクト等、具体的な支援策を進めています。

感染症対策における情報技術活用

2009年の新型インフルエンザ対策以降、日本における感染症危機管理対策に情報技術の観点から関わっています。その一環として、携帯位置情報の感染症リスク計算への活用や、患者発生プレスリリースのオープンデータ化へと取り組んできました。2020年の東京オリンピックによる感染症リスク対策として進めてきましたが、図らずも新型コロナウイルス感染症がパンデミック化し、社会的なニーズが高まっている技術です。

政策研究 / 医療用情報政策の政策評価

医療用情報技術政策

医療の効率化に向けて、2000年代以降、全国各地に地域医療ネットワークが構築されてきました。その総数は既に400件を超えますが、医療機関を越えた患者情報の電子的な共有は一般化しておらず、医療の質向上に寄与している事例も限定されています。そして、そもそも各地においてネットワークの維持自体が困難であることが報告されています。こうした政策上の失敗を総括し、政策を改善していくための研究を進めています。